ロレックスやオメガ、IWC、ロンジンなど、名だたる時計ブランドはその実用性や信頼性から高い価値を見出され、アンティーク愛好家たちの間ではいまなお高値で取引されている。
だがしかし、汎用ムーヴメントの採用や他社との協力開発によって良質な製品を生み出し、手ごろな価格帯で人知れず生き残り続けてきた傑作時計も数多く存在する。そこで今回は、マイナーだが確かな品質を備えた、隠れた名作シリーズを紹介する。
ニバダ
アンタークティック
今回紹介するのは、1970年代にニバダ グレンヒェンが製造したアンタークティックだ。数々の名作実用時計を輩出し、2019年にブランドが復活して以来も、ユニークな時計を生み出している。
そして、この“アンタークティック”も現ニバダ・グレンヒェンが復刻しており、記憶に新しい人もいるだろう。本個体の裏ブタにも、シンボルマークのペンギンの刻印が刻まれている。
筋目仕上げの文字盤にバーインデックスとクロスライン、長めのミニッツマーカーや6時位置のデイト表示を組み合わせた、シンプルながらもバランスの取れた顔立ちが魅力的だ。裏ブタには防水性を意識したスクリューバックが採用されており、ニバダらしい質実剛健な設計思想が感じられる。裏ブタ中心部のペンギンマークも、どこか遊び心を感じさせるポイントだ。

【写真の時計】ニバダ グレンヒェン アンタークティック。Ref.57066。SS(37mm径)。自動巻き(Cal.ETA2472)。1970年代製。11万8000円。取り扱い店/WatchTender銀座
【画像:裏ブタのペンギンマークやムーヴメントの状態を見る(全6枚)】
オーソドックスなデザインで、ニバダらしい癖の強さが薄いため、同社のコレクションのなかでもやや影の薄い印象を受けるモデルだが、日常の中で使用されることを考慮した設計が、実用の美学を感じさせる。
ムーヴメントには同年代の時計に数多く採用されていたCal.ETA2472を搭載。近年のETA2824とは異なり、ボールベアリングは採用されていないものの、二つのリバーサー車により、優れた巻き上げ効率を実現している。加えて、量産品でありながら、信頼性の高さから数多くの時計に使用されていたため、補修部品やドナーパーツが入手しやすい点も魅力的だ。
部品の互換性こそないものの、後継機に当たるETA2824と共通した設計のムーヴメントであるため、非常に優れた耐久性を有する。ETA2824のウィークポイントである、丸穴車周りの地板の構造も異なるため、地板側は摩耗しにくい構造だ。とは言え、自動巻き機構への負荷を軽減するためにも、手巻きを多用しないことをおすすめする。
デザイン的な主張こそ控えめであるものの、腕時計本来の機能性を重視した作りからは、日常生活の必需品として考え抜かれたアンティークウオッチならではの雰囲気が感じ取られる。デイリーユースを考える愛好家から、初めてのアンティークウオッチの購入を検討しているビギナーまで、万人におすすめできる実用派アンティークの1本だ。
【LowBEAT Marketplaceでほかのニバダの時計を探す】
文◎LowBEAT編集部/画像◎WatchTender銀座
