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【えっ、まさかここ!】そんな銀座昭和通り沿いにひっそりと。新世代らしい隠れ家的な時計ショップの渋〜い銘品|菊地吉正の時計考_037

ある資料を作るために古い時計を探していた先週のこと、そのひとつがアンティーク時計ショップ“ウォッチテンダー銀座”にあるということで早速実機を見せてもらった。今週はその時計について簡単に紹介する。

この時計はエニカ(ENICAR)というスイスの時計ブランドが作ったシェルパガイドというモデルである。エニカと聞いても一般的にはほとんど知られていないかもしれない。実は1854年に設立された歴史あるスイスの時計メーカーで、アンティーク時計好きの人にはよく知られている。そんな同社を代表する歴史的なモデルとして人気なのがシェルパの冠が付く同社のスポーツ系コレクションだ。

シェルパとは、みなさんもご存じのヒマラヤ登山をサポートするネパールの少数民族に由来。1956年にスイスの探検隊がエベレスト登頂を成功させた際にエニカの時計を携行したことから、堅牢なフィールドウオッチとしてのイメージ戦略としてシリーズ名に活用された。そのためここに取り上げたシェルパガイドのほかにもダイバー向けのシェルパスーパーダイブ。クロノグラフ機能を搭載したシェルパグラフなど数種類が展開された。

1960〜70年代まで製造されたこのシェルパガイドはその代表格といえるだろう。ケースメーカーのEPSA社が開発したことで知られ、水圧がかかるほど密閉性が高まる構造の“スーパーコンプレッサーケース”を採用。その防水能力に加えて構造こそ違うが24時間表示のインナー回転ベゼルと時針と連動して24時間で1周する副時針(GMT針)とでロレックスのGMTマスターと同様に時差のある二つの都市の時刻をひとつの時計で同時に表示できる優れた機能を備える。

ベゼル上に表示された都市名は時差1時間ごとに配置されているようで、時差を把握するためにプリントされているのだろう。そして視認性を考慮したのだろうかケースは43mm径とその当時としてはかなりデカい。いずれにせよツールウオッチとしての実用性は当時極めて高かったに違いない。

そんな優れた時計を作っていたエニカだったが80年代に倒産したものの実はいまも中国(香港)資本となって存在している。ただ引き継がれたのはブランド名だけで、現行コレクションを見渡しても当時のDNAを感じる商品はひとつもない。歴史的な傑作がありながらもまったく別のブランドとなってしまったことはとても残念としか言いようがない。

さて、今回お邪魔したウォッチテンダー銀座(Watch Tender銀座)だが、なかなかの面白いお店だった。まず驚いたのが場所。歌舞伎座タワーに程近い東銀座の大きな交差点すぐとロケーションは抜群。しかしながら「えっ、まさかここにお店?」と思ってしまうほどユニークなところにある。

店舗もこぢんまりとした広さながら昭和通りに面した大きな窓からは東銀座の交差点が見えたりと開放感があって、まったく狭さを感じない。程よく自然光も入って妙に居心地がいいぐらいだ。陳列棚にはびっしり時計が並んでいて、その品揃えはかなり幅広い。まだ30歳代という若いショップオーナーの中島氏らしいガチガチのアンテークだけじゃないチョイスが逆に見ていて楽しい。百聞は一見にしかず。中島氏もとてもフレンドリーなのでぜひ一度訪れていただきたい。ちなみに、ショップに出向く際は予約制とのことなので事前に連絡を。

【画像】コンプレッサーケースの刻印など詳細写真をもっと見る!

シェルパガイド。Ref.146/001。SS(43mm径)。自動巻き(Cal.AR1146、33石)。62万8000 円

【問い合わせ先】
Watch Tender(ウォッチテンダー)銀座(TEL.050-8883-9334)
https://watchtenderjapan.com/

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。
2019年から毎週日曜の朝「総編・菊地吉正のロレックス通信」をYahooニュースに連載中!

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