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そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ポルシェデザイン by IWC
コンパスウオッチ
今回紹介するのは、ドイツの自動車メーカー、“ポルシェ”の創設者であるフェルディナント・ポルシェの孫である、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェによって設立されたポルシェデザインと、IWCのコラボレーションによって誕生したコンパスウオッチだ。

【写真の時計】ポルシェデザイン by IWC コンパスウオッチ。Ref.3510。アルミニウム(39mm径)。自動巻き(Cal.375)1970年代製。55万円。取り扱い店/キュリオスキュリオ
1970年代に製造されたモデルで、時計部分が開閉できるようになっており、開けるとコンパスと救急信号用の鏡が装備されている。
一見すると、そのようなギミックに気づけない非常にインパクトのある構造だ。当時、外装デザインを担当していたポルシェデザインは、磁石を用いたコンパスを、磁気の影響を受けやすい腕時計に搭載するという難題に直面するものの、パートナーシップを結んだIWCは、以前から耐磁構造の研究を行っており、また西ドイツ海軍の水中地雷専門部隊向けに耐磁機能をもつダイバーズウォッチの開発を進めていたため、この問題を難なくクリアしたとされている。
このモデルでは精度と整備性に優れたETA2892をベースに、磁気を帯びない合金製の部品に置き換えたCal.375を搭載し、後に同社のミリタリーウオッチを代表するオーシャン BUNDにも採用されることになるのだ。
外装にはアルマイト処理を施したアルミニウムを使用し、軽量さと耐食性を高めている。また、ブレスレットは1コマ5mmに設計されており、定規代わりにして地図上の距離を測ることができるように設計されていた。デザインと機能性を融合させた合理的なデザインからはポルシェデザインらしさを感じられる。注意点として、アルマイト加工のやや柔らかいケース素材ゆえに、実際に使用する際にはケースの摩耗やコーティング剥がれに注意する必要がある。
同モデルの優れたデザインは現在でもコレクターからの人気を博し、後年においても復刻モデルが製造されるほどの人気ぶりであった。現在では電子機器やGPS機材の発展によって姿を消しつつあるツールウオッチだが、盛り込まれた工夫や機構、隠されたギミックは、いまなお男心をくすぐるアイテムとして残り続けているのだ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎キュリオスキュリオ