連日のように猛暑が続き、汗ばむ日が続く今日。日本の夏はアンティークウオッチを愛用する方々にとっては過酷な季節だ。汗だけでなく、水蒸気の多い外気や、エアコンの効いた室内と室外の温度差など、防水性能の高くない時計にとっては厳しい環境と言えるだろう。
そこで今回は水分の侵入経路が少ない、ワンピースケースを採用したアンティークウオッチ3本と、その取り扱いについて紹介する。
1本目は、1960年代に製造されたIWCのオートマチックモデルだ。
オーバル型のワンピースケースを採用し、ムーヴメントには同社が誇るペラトン式自動巻きのCal.8541を搭載している。リューズには魚のマークが刻まれており、防水性能を重視したモデルであることが伝わる。文字盤やムーヴメントに目立つようなサビや腐食がみられないため、しっかりと水分の侵入を防いでいたことが伝わる。

【写真の時計】IWC。Ref.R815A。SS(35mm径)。自動巻き(Cal.8541)。1960年代製。22万8800円/BEST VINTAGE
次に紹介するのは、キングセイコー スペシャル クロノメーターだ。
1970年代、亀戸の第二精工舎が製造した個体で、カレンダーの瞬間切り替え機能を備えた自動巻きのCal.5246を搭載。フラットなケース底面と、6時位置のラグ間に外部微動緩急調整機能が備わっている点が特徴的だ。34mm径のコンパクトかつ薄型のケースは、ワンピース構造の利点を生かした設計と言えるだろう。

【写真の時計】キングセイコー スペシャル。Ref.5246-6000。SS(34mm径)。自動巻き(Cal.5246)。1970年代製。6万9800円/WTIMES
最後に紹介するのは、1972年から80年までイギリス陸軍に支給されたCWC製のW10だ。
ステンレスの塊をくり貫いて成形したワンピースケースに防水型テンション風防で防水性を高めている。ムーヴメントには耐震装置付きのCal.ETA2750を搭載しており、ミリタリーウオッチらしい堅牢な構造が魅力的だ。外装は傷も多くヤレ感のある状態だが、軍用時計らしさにあふれている。

【写真の時計】CWC。イギリス陸軍 W10。SS(32.5mm径)。手巻き(Cal.ETA2750)。1973年製。17万6000円/キュリオスキュリオ
ワンピースケースは防水と堅牢性を高める目的で製造されたものだが、今回紹介した3本とも、製造から半世紀以上が経過していることに加え、リューズパッキンの劣化やプラスチック風防の圧入による固定など、現在ではその高い性能を維持しているわけではないため、十分なメンテナンスを行い、極力水気を避ける必要がある。
特に、夏の冷房の効いた部屋から湿度の高い室外に出る場合や、室外から涼しい室内に戻る際には注意が必要で、防水が効いていたとしても、時計内部に侵入した水蒸気が冷やされることで時計に結露が生じてしまい、内部の文字盤やムーヴメントに悪影響を及ぼす可能性がある。
そのため、時計に付着した汗や水分をよくふき取り、時計自体に激しい温度変化を与えないように取り扱う必要がある。
文◎LowBEAT編集部