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「時計はゴツくて多機能なタイプが好きです」高校中退後、ひきこもり生活を経て文学賞受賞!?|Time Files(タイム ファイル)Vol.002

様々な背景をもつゲストにスポットを当て、時計との思い出や宝物にまつわるストーリーを含めたインタビューを行いながら、それぞれの想いや価値観を紐解いていく連載企画、Time Files(タイム ファイル)。

第2回は文学賞受賞作家の経歴をもち、現在はオンライン家庭教師として活躍する大泉 芽衣子(おおいずみ めいこ)さんをフォーカス。彼女の波乱に満ちた人生や今後の展望を伺った。

大泉 芽衣子(Meiko Ohizumi)

高校を中退後、ひきこもり・療養生活を経て23歳で早稲田大学に入学。28歳のときに自身の小説『夜明けの音が聞こえる』が、集英社主催の純文学新人賞「すばる文学賞」を受賞。50代を迎えた現在は国語科・小論文専任のオンライン家庭教師として、中学受験生や大学受験生の指導を行っている。


●人見知りな幼少期、心の支えだった児童合唱団での活動

「幼稚園の先生に絵本ばかり読んでいないで友達の輪に入りなさいと注意させてしまうような、おとなしくて人見知りでした(家ではそうでもなかったようですが笑)。小学1年生と5年生で転校を経験したのですが、小学校でもうまく友達の輪に入れないことも多く、楽しい思い出はあまり残っていません」

習い事の書道とピアノも嫌々続けていたという大泉さんだが、唯一楽しかったと話すのが、小学3年生〜5年生のときに加入していた児童合唱団での活動だ。

「当時の人気TV番組『8時だョ!全員集合』で児童合唱団が出てくるコーナーがあったんですけど、それが本当に大好きで。子ども心にカッコいいな、入りたいなって思って(当時の芸能人スターと共演できていいな〜っていう理由も大きかったんですけど)。それで合唱団の入団試験を受けて合格し、2年間ほど活動しました。とにかく楽しくて仕方なかったのを覚えています」

幼少期(左)と小学生時代(右)


●高校中退・ひきこもりを経て、23歳で大学入学

中学・高校生時代にはバドミントン部に所属。部長を務めるなど活躍していたが、高校2年生の頃から主に精神面の不調で保健室登校に。当時の経緯を話していただいた。

「私自身は女性なんですが、当時は男子より女子が好きだったんですね。それで、高校時代にある女子に恋をしたんです。本当にその子のことしか見えなくなるぐらいに。年齢的にも思春期ど真ん中でしたし、日々悩みが大きくなって精神的にもどんどん不調になっていって、ある日突然倒れてしまったんです。いわゆる統合失調症のようなものでした」

以降は入院、不登校を経て高校を退学。18〜20歳の2年間は無気力で家から一歩も出られず、毎日のように自ら命を絶つことも考えながら、ひたすら読書をしていたという。21歳頃からはアルバイト生活を始め、大学受験を決意。猛勉強の末、23歳で見事名門の早稲田大学に合格を果たす。

中学生時代(左)と高校生時代(右)


●28歳で純文学新人賞「すばる文学賞」受賞

28歳のときに、大きな転機が訪れる。療養生活時代から少しずつ書き始めた小説『夜明けの音が聞こえる』が、第25回「すばる文学賞」を受賞(※同賞は1977年より続く集英社主催の純文学新人賞で、受賞倍率は実に1000倍以上。芥川賞受賞作家を含む錚々たる顔ぶれが受賞歴を連ねる)。脚光を浴び、集英社から単行本が出版される。

「以降は小説家として生計を立てたかったんですが、やっぱり現実は甘くないなと。しばらくは大手塾に勤めていたんですけど、一念発起して仕事をやめて小説に全振りしたことがあったんです。超ボロアパートを借りて無理やり自分を追い込んで。渾身の一作を書き上げて出版社に持っていったんですけど、まあ相手にされなくて。その後も様々な出版社に『かつて新人賞をとった大泉と申します』って全力で売り込んでもまったく読んでももらえず。こりゃ厳しいな、生きていけないなって思いましたね」

2002年発売の自身の小説『夜明けの音が聞こえる』

【次ページ】時計と宝物、現在の職業や今後の目標について

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