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そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ブライトリング
ナビタイマー クロノマチック
今回紹介するのは、1960年代後半から1970年代後半頃まで製造されていたブライトリングのナビタイマー クロノマチックだ。
1969年、かつて量産化は非常に困難とされていた自動巻きクロノグラフを、スイスと日本の時計メーカーが一斉に発表した。ブライトリングもその中の一社であり、ホイヤーを中心に、レオニダスやマイクロローター式の自動巻きを得意とするビューレン、そしてその親会社であるハミルトン、さらにクロノグラフ機構に長けたデュボア・デプラらが協力し、共同で開発・製造を行っていた。

【写真の時計】ブライトリング ナビタイマー クロノマチック。Ref.1806 (DDE.BR 11525/67)。SS(48mm径)。自動巻き(Cal.12)。1974年頃製造。66万8800円。取り扱い店/BEST VINTAGE
【画像:スクリューバック式の裏ブタや文字盤の状態を見る(全6枚)】
自動巻きクロノグラフ黎明期に設計されたムーヴメントであるため、技術的に未成熟な部分も少なくはなかった。とは言え、マイクロローター式自動巻きをベースとし、その上にデュボア・デプラ製のクロノグラフモジュールを重ねるという構造は画期的であった。この設計思想は、後の自動巻きクロノグラフに大きな影響を与えたと考えられており、現在では、3針のセンターローター自動巻きムーヴメントの文字盤側にクロノグラフモジュールを搭載する方式が広く用いられている。
動力伝達とクロノグラフの制御方式には、現代でもETA7750が採用するスイングピニオン式とカム式が採用されており、生産性と確実な動作性を実現している。また、プレス加工が容易で曲げの少ない部品を使用したことも、生産性の向上に寄与していたと考えられる。
デザイン面では、ブラックを基調とした文字盤にホワイトのインダイアルがよく映え、夜光塗料によるグリーンとオレンジの針が組み合わさることで、スポーティーでありながらもどこかレトロな雰囲気を醸し出している。6時位置に配されたデイト表示の赤い数字も、アンティークならではの魅力的なディテールだ。文字盤およびその外周にある回転計算尺には、目立つ汚れや剥がれは見られず、良好なコンディションを保っている。
ムーヴメントには、当初は毎時1万9800振動であったCal.11の振動数を、毎時2万1600振動に引き上げることで精度の向上に成功した第2世代のCal.12を搭載している。ムーヴメントはかなり分厚く、プッシャーもリューズとは逆方向に配さるなど、試行錯誤を繰り返しながら誕生したことがうかがえる。
しかしながら、初期型ゆえの“プロトタイプ的”な魅力は、アンティークでしか味わえないだろう。構造的に巻き上げ効率が低く、全体的に厚みが出てしまうという欠点はあるものの、その後の自動巻きクロノグラフの礎を築いたこのムーヴメントは、まさに名作と呼ぶにふさわしい逸品と言えるはずだ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎BEST VINTAGE