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【高精度化を目指したセイコーの“61GS”】ハイビート自動巻きの魅力と選び方のポイントを解説

アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。


セイコー
グランドセイコー  ハイビート デイデイト

今回紹介するのは、1968年にセイコーが生み出したハイビート自動巻きのグランドセイコーだ。本モデルは、搭載ムーヴメントの“Cal.6146”にちなみ、愛好家の間では“61GS”の愛称で親しまれている。

厚みのあるどっしりとしたフォルムのケースにはブランドのアイコンとも呼べるセイコースタイルが採用されており、他メーカーとは一線を画すスタイリングが魅力的だ。GSのロゴが刻印されたリューズも、ケースの力強い造形に調和するよう、大振りで刻みの大きい専用品が採用されている。

文字盤のインデックスやロゴ、デイデイト窓の枠には、手間のかかる植字仕上げが施されており、高級機らしい上質な作りが際立っている。クロスラインの入ったサンレイ仕上げの文字盤が特徴的な個体だ。ケースなどには使用感を感じる小傷が見受けられるが、オリジナルのシェイプを保った良好な状態をキープ。文字盤も目立った傷や変色は見られない良好なコンディションだ。

【写真の時計】グランドセイコー ハイビート デイデイト。Ref.6146-8000。SS(36mm径)。自動巻き(Cal.6146)。1969年頃製。取り扱い店/WTIMES

【画像:ケースや文字盤の状態を見る(全5枚)

 

本モデルは、1968年に発売された国産初の自動巻きハイビート機であり、毎時3万6000振動(毎秒10振動)もの振動数によって優れた等時性を誇っていた。これに加えて、優れた巻き上げ効率を誇るマジックレバー式の巻き上げ機構を搭載しており、トルク変動を抑えることで等時性を保っていたのだ。

また、本個体に搭載されるCal.6146は、セイコー5やダイバーズウオッチに数多く採用されていたCal.61系の派生機であり、整備性と耐久性に優れているという点にも注目だ。ただし、ハイビート専用に再設計されているため、ほとんどの部品に互換性がない点には気を付けたい。

1960年代後半当時、天文台コンクール機を除き、市販品で毎時3万6000振動を実現していたモデルは世界的にみてもごくわずかで、ロンジンのウルトラクロンやゼニスのエル・プリメロ、セイコーのCal.5740C、Cal.1964、Cal.45系など、数えるほどしか存在しなかった。70年代に入ると、ア・シールドやETAといった汎用ムーヴメントメーカーからもCal.AS1920やCal.ETA2837といった毎時3万6000振動のムーヴメントが登場するが、いずれも広く普及することはなく、市場から姿を消していくことになる。

その理由として、高速で動作するテンプやアンクルなどの脱進機周りの潤滑油が飛散しやすく、当時の潤滑油の性能では長期間にわたって精度や耐久性を維持することが困難であったことが考えられる。そのため、70年代以降は振動数を、精度と耐久性のバランスが保ちやすい、2万8800振動に落としたムーヴメントが普及していった。そんな中、セイコーは保油装置の“ダイアフィックス”をガンギ車などの軸受けに採用し、スイス製の高性能な潤滑油を使用することで優れた精度と耐久性を両立させていたのだ。

ただし、製造から半世紀以上が経過した現在では、適切な整備や定期的なメンテナンスが施されていない個体も少なくなく、当時の性能を発揮できるものは徐々に減少しつつある。そのため、本モデルの購入を検討する際には、しっかりと整備された個体、もしくは信頼のおける時計店で取り扱われているものを選ぶことを強く推奨したい。

ネットオークションやフリマアプリなどで、安価なジャンク品を手に入れたものの、修理費用で状態の良い個体がもう1本買えてしまう……といったケースも少なくない。購入の際には、そうしたリスクも念頭に置いて慎重に判断したいところだ。

 

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文◎LowBEAT編集部/画像◎WTIMES

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