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そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
セイコー
ワールドタイム
1964年は東京オリンピックが開催された年であると同時に、海外渡航の自由化が実現した年でもあった。国際社会への意識が深まる中で、日本の腕時計メーカーたちは海外渡航者や国際市場を意識した時計の製造に乗り出していったのだ。
それこそが、昨今の時計でも数多く採用されている “ワールドタイム機能”を備えた腕時計であった。

【写真の時計】SS(37.5mm径)。自動巻き(Cal.6217A)。1967年頃製。35万2000円。取り扱い店/Watch CTI
今回紹介するのは、1964年の東京オリンピックに合わせてセイコーが発売した、国産自動巻き初のワールドタイム機能を搭載した腕時計だ。この個体は67年製であるが、裏ブタには聖火マークが刻印されている。
この当時は、通常の3針ムーヴメントを搭載して、都市名をプリントした回転ベゼルを回して任意の都市時刻を読み取る簡易的な方式がほとんどであったのに対し、このモデルでは24時間針と都市名がプリントされたインナーリングで海外の時刻を読み取る本格的な仕様であったのだ。もっとも、内周のリングが時刻と連動して動くわけではなかったため、海外の時刻を確認する際は毎回インナーリングを設定し直す必要がある。このインナーリングは4時位置のリューズを押し込んだ状態で回すことで操作が可能だ。
昼夜を判別しやすくするために色分けされた24時間表記や、回転式のインナーベゼルなど、実用性を考慮しつつも、バランスよくデザインされた文字盤が個性的だ。装着性を考慮して4時位置に配置したリューズもセイコーらしさにあふれている。またわずかに盛り上がった印字は文字盤上に立体感をもたらし、作りの良さを感じさせる要素となっている。
ムーヴメントにはセイコーのファーストダイバー“62MAS”に搭載されたものと同系統のCal.6217Aが搭載されている。手巻き機能はついていないものの、巻き上げ効率に優れたマジックレバー式の自動巻き機構を備えているため、使用前に十分な巻き上げを行えば問題なく使用できるだろう。パワーリザーブこそ従来どおりの短いものだが、日常動作でもゼンマイがしっかりと巻き上がるため、安定した精度が期待できる。
全体のコンディションは良好で、文字盤や針にも目立った傷やシミは見られない。加えて、純正の細やかなコマが特徴的なステンレスブレスが付属している点は見逃せない。
近年は、国産初のワールドタイム機能を備えた時計であることに加え、後の61系ワールドタイムやGMT機能を備えたデュオタイムなど、数々の名作の礎となったモデルである点からも、人気が高まっている。国産腕時計のなかでも、特殊機能を備えたモデルや特別なモデルを探しているという人にはおすすめの1本だ。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎Watch CTI