アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
セイコー
グランドセイコー GSセルフデーター
今回取り上げるのは、1966年に諏訪精工舎で製造された、グランドセイコー第二世代、通称“57GS”だ。
60年に登場した初代グランドセイコーの後継として、64年に登場したセカンドモデル“GSセルフデーター”。ケース素材は真鍮地金の金張りからステンレススチール製へと変更され、さらにねじ込み式裏ブタを採用することで、実用的な防水性能を獲得したモデルであった。また、モデル名が示す通り、当時需要が高まりつつあったデイト表示を備えている点も大きな特徴である。
ムーヴメントは、同社の“クラウン”系をベースとしていた初代の設計を引き継ぎつつ、日付表示機構を追加したもの。国産時計の中でも耐久性に優れ、ロービートながら安定した精度を発揮する機械として知られている。もちろん、現在において当時のスペックをそのまま維持することは容易ではないが、適切な整備を施すことで、日常使いに十分な実用精度を引き出すことが可能とされる。
本個体は、振動数が毎時1万8000振動から毎時1万9800振動へと高められた、手巻きムーヴメントCal.5722Bを搭載している。初期のCal.430から発展したCal.5722Aを経て、その最終発展型として登場したムーヴメントである。
全体のコンディションを見ると、ケースには使用に伴う小キズこそ見られるものの、目立った打痕は確認できない。文字盤にも腐食や変色は見られず、良好な状態を維持している。素材がステンレススチール製へ変更されたことに加え、気密性を高めた防水構造を採用したことで、ファーストモデルと比較すると良好なコンディションを保った個体が多いという点も、本シリーズの特徴のひとつと言えるだろう。

【写真の時計】セイコー グランドセイコー GSセルフデーター。Ref. 5722-9990。SS(37mm径)。手巻き(Cal.5722B)。1966年製。29万7000円。取り扱い店/TOKIBANK
【画像:文字盤のディテールや35石仕様のムーヴメントの状態を見る(全6枚)】
初代モデルでは、ロゴマークやメダリオン、ケースデザインなどを個別に検討し、それらを組み合わせる形で時計全体のデザインが構成されたとされている。一方、本作ではデザイナー主導のもと、時計全体を統一的にデザインする思想が取り入れられたという。
しかしその後、製品企画や品質管理体制の変化、さらには品質向上のための改良など、様々な要因によって頻繁に仕様変更が行われた。その結果、多彩なバリエーションが生まれることとなったのである。
今回取り上げる個体は、リファレンスナンバーがRef.5722-9990へ変更された、66年後半以降の後期型に該当する個体だ。リファレンス表記の変更に加え、文字盤のマイナーチェンジ、リューズの刻み形状、裏ブタのメダリオンや刻印、さらにはムーヴメント仕様に至るまで、掘り下げれば掘り下げるほど細かな差異が存在するモデルでもある。
そのためアンティーク市場では、過去の修理や部品交換によって、年式の異なる文字盤やムーヴメントが組み合わされた個体が流通している可能性にも留意しておきたい。これらは必ずしも模造パーツが使われているわけではないため、一概に“非オリジナル”と断定することが難しい部分でもある。
その点、今回取り上げた個体は、ムーヴメントこそCal.5722Bを搭載しているものの、裏ブタには初期〜前期型の特徴であるライオンメダリオンを備えている。一見すると仕様の組み合わせが異なっているようにも思えるが、各パーツの仕様変更が段階的に切り替わっていた66年中頃(製造刻印は66年7月)の過渡期に製造された個体であることを踏まえると、メーカー出荷時のオリジナル状態を保っている可能性が高いと考えられる。
初代モデルの長所を受け継ぎつつ、時計としてのデザイン性と実用性をさらに高める進化を遂げた、セカンドモデルのグランドセイコー セルフデーター。シンプルな外観の裏側に、細かな仕様違いや多彩なバリエーションが存在する奥深さを秘めた、実に魅惑的な時計なのである。
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文◎LowBEAT編集部/画像◎TOKIBANK
